
〜トレランシューズ開発よもやま話〜
座談会:rig footwear×Answer4ファーストインプレッション
rig footwearとAnswer4との協業によるトレランシューズの開発がスタートしていることは前回の記事ですでにご存知かと思うが、フィールドテスト用のサンプルが出来上がり現在テストを進めている。今回はそんなサンプルモデルでテストを進める小林大允さんを筆頭としたAnswer4クルーにお話を伺い、その仕上がり具合に迫ってみた。
※写真左から奥村友昭さん、村田諒さん、小林大允さん
ーーーーーシューズの感想の前にまずはそれぞれ自己紹介やこれまでの経歴などをお願いします。
小林大允さん 以下 小)Answer4の代表取締役の小林です。戦歴は”サイラー”※1です(笑)。あとはまぁ、UTMB完走って感じですかね。
※1 トレニックワールド in 彩の国の100マイル部門の完走者を指す言葉。難コースに加え厳しい時間設定で毎年完走率が低いことで有名。
奥村友昭さん 以下 奥)Answer4スタッフの奥村です。100マイルは15本くらい走ってるのと、トレイルではないですけどBackyard Ultra Last Samurai Standing※2っていうのにも出ていて一昨年は予選大会3位で日本代表チームにも入りました。
※2 1時間ごとに約7キロをループして走り続けるノックアウト方式のレース。奥村さんは2023年の東京予選では最後の三人まで残り、415.772kmを走破。
村田諒さん 以下 村)村田諒です。Answer4アスリートです。戦歴で言うと、大きいところだと去年のMt.FUJI100※3で男子総合3位だったりします。あと、今年は比叡山インターナショナルトレイルランと言う23kmの大会で優勝が直近のレース結果です。
※3 起伏に富んだ富士山の裾野を繋ぐ100マイルレース。2012年にスタートし昨年も2000人を超える参加者を誇る国内最大規模の大会。
ーーーーーそれぞれ異なるスタイルや戦歴なので受け止め方が違うと思いますが、サンプルを履いての第一印象はどうでしたか?
村)すごいニュートラルな靴。何かがすごい際立ってるっていうわけではなく、自然な感じのバランスですね。普段ゼロドロップ※4はほとんど履かないのでそこのギャップが大きかったんですけど、走り始めると意外とそのギャップを感じないと言うか感じさせない。上りも下りも平地も、何かを特に強く意識するとかせず、スムーズに走りに移行できたっていうところは、足入れした時の第一印象よりポジティブでした。
※4 つま先部分と踵部分の高低差が少ないシューズ。ブランドによって定義は若干異なるが、裸足のような自然な感覚でフォームの改善や怪我予防などにも繋がるとされる。
奥)自分も同じような感想なんですけど、なんか本当に良くも悪くも癖がなくて、靴に馴染むのもすごく早い感じがしますね。ホールド感も前足部が程よい広さでブレることもなくて、走りやすいのがいいかな。あと、上りの時に反発がちゃんと推進力に変わる感じがあるし、この辺がすごい好きかもしれないです。
小)そうですね。最近はずっと履いてるんで、アッパーがみんなダメージを受けているんですけど、そんなに変なホールド感もないんで、履いてて違和感がないというか。あとは”街履き”にもしやすいんで。うん、結構使いやすいかなと。
ーーーーーいつも履いているシューズとの違いはありましたか?
小)基本ゼロドロップしか履かないんで、今までと何も変わらない。なので、ラン用と”街履き”の2足用意しておけば事足りるかなって感じです。
奥)自分はゼロドロップではないですが5mmくらいのドロップが少ないタイプを愛用しています。あと、普段は結構厚底系を選んでるんですけど、コレは少し薄い分ダイレクト感があってグリップを強く感じられましたね。
村)僕は普段かなり厚底を使う。ドロップも高いし、ものによってはカーボンが入ってるモデルも履くんで、それとは対極にあるようなシューズですね。
ーーーーーお二方は厚底派とのことですが結構違和感を感じましたか?
小)ソールの厚さは気になる人が多そうだよね。ただ、最初企画がランニングサンダルから始まってるし、レースではないにせよ安心して履ける薄底のゼロドロップのシューズを求めてる人も多そうだけど。
村)確かに…結果を求めて走ってる時のファーストチョイスにはならないかなと思うんですけど、コレを履いて走ったら使ってる筋肉とかが普段と違う感覚で走れたんでそう言う部分は面白い。レース後とかの、体の状態をチェックするとか、自然をダイレクトに感じたいなっていうリフレッシュランとかの時に合いそう。今まで自分の下駄箱にはないようなシューズなんで、1個あるだけでも体との対話の仕方が変わるかなっていうのはちょっと思いました。
奥)自分はドロップの感じは普段使ってるのとそこまで違いがないので、実際に走ってみてってかんじですかね。
ーーーーーシューズの特性上、人によって使い方が変わってきそうですが皆さんのオススメの使用シーンはありますか?
村)子供と一緒に山に遊びに行く時とか、なんかそういう自然な感じでのトレーニング…それこそ、街と山の境目を繋いでくれるようなシーンとかですかね。以前にゼロドロップで足の調子が悪くなっちゃった時があって、その時は幅が広すぎて変に掴もうとしちゃって…まだ分かりませんけど履いてみてもう一回トライしても良いかなって。
奥)自分はそうですね、目標とするレースの前に半年ぐらい掛けて練習するんですけど、最初の足作りの時の峠走とか、そういう時に履けるとすごいいいのかなっていう感じはしますね。例えば、上りのポイントとかで、自分の動き確認するのにちょうどよさそうなシューズな気がします。
村)確かにトレーニングの仕上がりを見るのには合ってるかも。あと、若干用途は違うけどウエイトトレーニングとか。
ーーーーー先ほど小林さんから”街履き”との声がありましたが。
小)そうですね。さっきも”街履き”という話をしましたが、デザインは割とそれを意識していてそれでガムソールっぽくしてるんです。もちろん、100マイルもこれで走るんですけど、クッション性も結構あるので普段履いてても不便はない。
村)僕はクッション性に関しては必要十分っていう感じでした。硬過ぎず、沈み込み過ぎず。あとね、この屈折がどこでもできるっていうのは強み。こっちでも曲がるし、ここでも上がるし、僕はそんな感じが割と好きでした。
奥)沈み込みはあんまり感じないっすね。それによりダイレクトに自分の足の動きが伝わる感じがしてすごく良いんです。デザインは確かにちょっとスケートシューズっぽい感じで、見た目はそんな速いイメージはないんですが(笑)。
ーーーーー細部の良かった点、イチオシポイントなどがあれば教えて下さい。
小)さっき、前足部のフィット感が良いって声があったけど、つま先の部分はモックの段階から2回くらい修正した。最初はちょっと狭くて掴みづらかったし、使ってると小指が出ちゃうこともあったから良い感じに仕上がってきてる。あと、このメッシュ素材が濡れても保水しにくい。
奥)確かに程よいホールド感が良いですね。自分はもともとモートン病※5で、細いシューズが履けないのですが、このサンプルは今のところそう言うのがない。
※5 足の指の神経が圧迫されることで生じる痛みや痺れを伴う神経障害。足への過度な負担やシューズの不適合で発症するランナーも多い。
村)水抜けが良いのは嬉しいですね。GORE-TEXなどを使った防水のシューズとかもありますが、どうしても蒸れが酷いのでレースでの選択肢から外れてしまいますし。
奥)あと、アウトソールも絶妙ですね。いつも履いてるのがVibram®︎社のメガグリップソールなのですが、それだと滑らすことができなくて。でも、このシューズだと前を滑らしつつ踵がしっかり残るので止まってくれる。
ーーーーー最後に改善希望などはありますでしょうか?
小)改善点? うーん…何かある?
奥)自分はファーストサンプルからヒールホールドのフィット感を改善してもらってかなり満足してます。踵が抜けず安心感が増しました。
村)僕は前足部シャープな方が好きなので若干持て余す感じはしますが、それがある種の良さでもあるので基本ないですね。
小)そうだなぁ、俺はベロが少し短いことくらいかな。