〜トレランシューズ開発よもやま話〜
対談:小林大允×栗原 巧
日本発のリカバリーサンダルブランドとしてスポーツ、ファッションの両シーンから注目を集めるrig footwear。24F/Wシーズンにはそのノウハウを生かしたハイキング、アプローチシューズを新たにラインナップへ加え登山シーンにも切り込もうとしている。そんな中、同社が新たにトレイルランニング用のシューズを、高尾山をベースに日本のトレランシーンを牽引するAnswer4との協業で開発している情報をキャッチ。今回はそんな噂の真相切り込むべく、両ブランドの代表に話を聞いてみた。
小林大允(左)
フランスはシャモニーを舞台に開催される最高峰のトレイルランニングレース” Ultra-Trail du Mont-Blanc”を自作のザックで完走し、その経験を経て2014年にAnswer4をスタート。現在は高尾に拠点を置き、ランナーとハイカーのより良い関係を目指したプロジェクト・高尾マナーズ(高尾トレイルマナー向上委員会)を発足するなどの活動も行っている。
Answer4:https://answer-4.com/
栗原 巧(右)
mesutta代表。日本発のリカバリーサンダルブランド・rig footwearを手がけるほか、究極の汗止めバンド・HALOheadbandや靴擦れを起こさない2重構造の靴下・WRIGHTSOCKなど、海外のユニークなギアを日本へプレゼンテーション。また、各ブランドを通してアスリートやコミュニティへのサポートを積極的に行っている。
すごいクッション性があったのがとにかく驚き。リラックスできるので海外遠征の時に持っていったり、普段使いするのにもすごく良いなって感じ(小林)
ーーーーーお二人が出会ったきっかけは?
栗)初めてお会いしたのは奥信濃※ですよね?
※1 奥信濃100…高社山周辺を舞台に開催される総走行距離100kmのトレランレース。アドベンチャー感に溢れる起伏に富んだコース設計で人気が高い。
小)そうですね。隣同士でブースをやってて、その時にAnswer4のジャケットを買ってもらって。
栗)そう、それで小林さんもrigのサンダルを買ってくれて。僕は元々Answer4が好きだったから、別注とかどうですか?って声を掛けたのが確かきっかけでしたね。
小)その時、rigを初めて知って履いてみたんです。リカバリーサンダル自体そもそも履いたことがなくて、いつもビーサンだったんで(笑)
栗)聞くのが怖いですけど、実際どうでしたか?
小)すごいクッション性があったのがとにかく驚き。リラックスできるので海外遠征の時に持っていったり、普段使いするのにもすごく良いなって感じで。その後すぐに連絡しました。
栗)現場で別注の提案をして、そしたら1週間後くらいに小林さんから連絡があって「これどうやれば作れる?」みたいな感じでドンドン話が進んで行きました。
(トレランシューズの協業は)僕から別途オファーしました。rigの未来と言うか僕の頭の中に自然とトレランシューズっていうのはランナップにあって(栗原)
ーーーーー別注の流れで協業も決まったんですか?
栗)これは僕から別途オファーしました。rigの未来と言うか僕の頭の中に自然とトレランシューズっていうのはランナップにあって。僕も山が好きなんで、今年からハイキングシューズも出すんですけど、山のアクティビティを語る上でトレイルランは外せない。ただ、シューズ作りとなると…。
小)確かに流行り廃り、人によって合う合わないは結構ね、シューズにはあるから。
栗)僕自身も実際に山を走るんですけど、10km、20kmくらいしか走れないので、もっとガチで走ってる人たちと一緒に作りたいと思って。
小)トレランと言ってもレベルに幅がありますから。うちのトレラン教室だとビギナーのクラスで最低20kmくらい走れないとってのがありますし、大きな大会になると100マイル(160km)がざらですからね。
栗)それで、ちょうどその時小林さんとのコラボが進んでいて、小林さんのところにはサポートしている本気のランナー仲間がガッツリいるんで、その人たちにも協力してもらって一緒に作りませんかって提案したのが始まりですね。
ーーーーー今回一からのトレランシューズ作りとなりますが着想源は?
栗)そもそもの始まりはトレラン用のサンダルだったんですよ。トレランのショップの人たちから走れるサンダルを求める声が多くて。
小)うちのランニングクラブの生徒も常にサンダルしか履かない人がいたり、大会で160kmを完走したりする人もいます。あと、サンダルを自作する人もいたり。
栗)何年も前からルナやゼロ※2 が流行ってるんですけど、ソールが薄くいきなりやって足を壊す人が多いらしいんですよ。だから、リカバリーサンダルを作っているrigに、クッション性が高くてトレランが走れるようなモデルを作ってくれないかって要望が来るようになって。
小)サンダルのような薄いソールは僕もたまに履いてたりしますし。走り方が改善される効果もあるんですよ。厚底の靴ってクッション性があるんですけど、どこで踏んでも極端な話感覚が鈍く痛くなることがない。尖ってる石だろうが根っことか気にせずどんどん、どんどん行くんすけど、薄いとこう結構シビアというか感覚を研ぎ澄ませて行かないとダメ。
栗)そうですね、薄ければ、厚ければ良いなんて単純な話じゃない。一応、2つインソールのアイディアがあって今はそれを試しに作ってみようってところに来ています。やっぱりまずはソールなんで。
※2 ルナ…ルナサンダル(LUNA SANDALS)、ゼロ…ゼロシューズ(XEROSHOES)。両社ともメキシコ北部の山岳民族タラウマラ族が使っていたワラーチと呼ばれるサンダルにインスピレーションを得た薄くて平らなソールが特徴のサンダルを展開。
レースによっては40時間履き続けるんで、少しのマイナス要素も取りこぼさず全部クリアしてかないといけない(小林)
ーーーー小林さんが求めるシューズの理想系は?
小)まぁ当たり前ですけど、僕やランニングクラブのコーチ、生徒もだいたい100〜160kmのレース出るんで、そこで不満が出ないシューズ(笑)。それって究極っちゃ究極ですけど。20時間とか、まぁ30時間は当たり前…レースによっては40時間履き続けるんで、少しのマイナス要素も取りこぼさず全部クリアしてかないといけない。だからサンプルできたらテストしまくるしかない。
栗)そう言う意味でも小林さんたちの協力は欠かせませんね。
小)長時間履き続けると結構出てくるんですよ。最初良かったのがだんだん「なんだよココ!」みたいな感じになって痛くて布を詰めて無理やり凌いだり。バックとかもそうなんですけどなかなか一発OKは出なくて、テストで30時間くらい背負い続けます。
栗)今はまだそこまでは行ってないから、いずれにせよテストはこれからですね。まだ形状を詰めている段階だから、これからどんどんテストを繰り返して改善していかないと。
小)ただ、僕なんかトレイルをロードシューズで走ってたりしますから、ツルっとした凸凹のないソールの。今使ってるアルトラ※3 の”ティンプ4”も特に不満がなかったんで、ソールとかの部分になると結構難しいですよね。
※3 ヒール部分の過度なクッショニング性を排除した”ゼロドロップ”が特徴のシューズブランド。自然な足運びが出来ることから日本のトレイルランニングシーンでも高い知名度を誇っている。
ーーーーーシューズの開発状況、進行度は?
栗)完成したら売ろうかなとしか考えてないんで、これに関しては…。
小)それじゃあ、また対談しなくちゃいけないですね(笑)。
栗)そうだね、連載引っ張るねー(笑)。売り出せるタイミングが夏から冬にかけてだったらシューズから出して、春から夏にかけてだったらサンダルから出してっていう感じですかね。
小)じゃ来年あたりはrigのシューズで走れるといいですね!
栗)頑張ります(笑)。 時間かかるんすよ…ソールを作るのって皆さんが思ってるより時間かかるんすよ。