Free shipping for orders over ¥10,000
Free shipping for orders over ¥10,000
Free shipping for orders over ¥10,000
カート 0

カートは空です

〜トレランシューズ開発よもやま話〜

対談:小林大允×栗原 巧

リカバリーサンダルブランドとして歩んできた我々rig footwearが、Answer4をパートナーに迎えてスタートさせたトレランシューズ開発プロジェクト。これまで本連載では、プロジェクト始動の経緯、Answer4クルーによるサンプルのファーストインプレッション、そして同じソールを搭載して一足先に誕生したトレイルサンダルと、開発の道のりを追いかけてきた。そして何度もの金型の作り直しと、100マイルレースを含む過酷なフィールドテストを経て、ついにトレランシューズが完成! #01の対談で「来年あたりはrigのシューズで走れるといいですね!」と笑い合った二人、代表の栗原 巧とAnswer4の小林大允氏が再び顔を合わせ、約2年に及んだ開発の舞台裏と、完成した一足に込めた想い、そしてこの先の展望をざっくばらんに語り合う。

 

出演者プロフィール

小林大允(右)

フランスはシャモニーを舞台に開催される最高峰のトレイルランニングレース“Ultra-Trail du Mont-Blanc”を自作のザックで完走し、その経験を経て2014年にAnswer4をスタート。現在は高尾に拠点を置き、ランナーとハイカーのより良い関係を目指したプロジェクト・高尾マナーズ(高尾トレイルマナー向上委員会)を発足するなどの活動も行っている。

Answer4:https://answer-4.com/

 

栗原 巧(左)

mesutta代表。日本発のリカバリーサンダルブランド・rig footwearを手がけるほか、究極の汗止めバンド・HALOheadbandや靴擦れを起こさない2重構造の靴下・WRIGHTSOCKなど、海外のユニークなギアを日本へプレゼンテーション。また、各ブランドを通してアスリートやコミュニティへのサポートを積極的に行っている。

 

サンダルのソールにアッパーをつければ、シューズも作れる。そこから「じゃあ作ろう」って(栗原)

ーーーーー改めておさらいですが、本格的なトレイルランニングシューズを作ることになった経緯は?

栗)始まりはやっぱりサンダルなんですよ。もともと作ろうとしていたのがトレランサンダル、つまり「トレイルでも走れるサンダル」がコンセプトで。普通のスポーツサンダルやうちのリカバリーサンダルとはそもそも構造が全然違うんですけど、そのソールの開発に着手したら、「アッパーをつければこのソールでシューズも作れますよ」って話になって。それでじゃあ作ろうと。

ーーーーー小林さん自身も、本格的なトレランシューズのプロデュースは初めてですよね?

小)初めてです。シューズを作りたいなという気持ちは前々からあったんですけど、全然専門分野じゃないし、無理だろうなって思ってました。

ーーーーー実際に着手してみて、一番苦労したのは?

栗)ソールですね。ワイドトゥにしつつ、ぼってり見えないようにするところはデザイナーのアイデアが活きているんだけど、苦労したところ。あとは軽量化ですね。アウトソールはどうしてもラバーが重たいから、どれだけ削ってグリップを維持できるか。そこは何回か調整した部分です。

 

やっぱり走ってて楽しくないんですよ。厚底だとトレイルを走ってる感がない(小林)

ーーーーー小林さんには、最初から明確なビジョンがあったんですか?

小)ある程度は。走り始めてもうかれこれ20年くらいなので、いろんなシューズを試してきて、100kmや160kmのレースで失敗したこともあったので。まず、あまり過剰なアッパーじゃないものがいいなと。一番譲れなかったのは、厚底すぎない、着地感のあるシューズ。

ーーーーー今は厚底が主流ですが、それには理由があるんですか?

小)やっぱり走ってて楽しくないんですよ。厚底だとトレイルを走ってる感がない。スポンジみたいにフニャンと沈んでいくのが好きじゃなくて。ある程度のクッション性と、ダイレクト感というか接地感があるシューズがいいシューズだと思っています。とはいえ、ベアフットまで振っちゃうとなかなか万人受けしない。ビボ※1はいいシューズなんですけど、ちょっと薄すぎちゃって。自分がやっている長い距離のカテゴリーだと、なかなか使いづらいんですよね。

※1 ビボ…ビボベアフット(VIVOBAREFOOT)。裸足感覚を追求した薄く柔らかいソールが特徴のイギリス発のシューズブランド。

ーーーーーその要望を受けて、栗原さんはどう感じましたか?

栗)自分はそこまでロングレースを走るわけじゃないけど、トレランの時はトレランシューズの中でも薄底を好んで履いていたので、その感覚はすぐに賛同できました。“ですよね”みたいな(笑)。

ーーーーーとなると、やはりソールが開発のポイントに?

栗)薄すぎると突き上げの問題があるので、中にしっかりしたプレートを入れています。ただ薄ければいいってわけでもないんですよ。昔よくイノベイト※2を好んで履いてたんですけど、あまり薄いとフニャフニャして突き上げがきつくなる。その辺はしっかり対策できたと思います。

※2 イノベイト(inov-8)…イギリス・湖水地方で生まれたオフロードランニングシューズブランド。薄底・ロードロップのモデルで知られる。

 

たかが数センチ。でも何十時間も履いてると、それがすごく気になるんです(小林)

ーーーーー具体的に、どんな改良を重ねてきたんですか?

栗)ソール自体はサンダルの段階である程度固まっていたので、改良はラバー部分が多かった気がします。プロトタイプではここがVの字に削れていて、細いからブレる。それを面にしたらブレにくくなったとか。それも一回型を起こしてから分かることなので、もう一回金型を作り直して。この辺りもちょっとでも軽くできるように肉抜きしているんですけど、抜きすぎて切れちゃったりもして、また金型を作り直したり。

小)かかともやってもらいましたよね。突き上げ対策や反発を生むためのシャンク※3が中に入っているんですけど、それが効きすぎちゃって、上りで脱げちゃう。今はもう全然問題ないです。あとはファーストサンプルのシュータン。履いてるうちにずれて下がっていっちゃうんですよ。

栗)あれは紐を1個上に通そうって小林さんが言ってくれて。結局、紐を1個上に通しただけなんですよ。

小)たかが数センチなんですけど、長い距離で何十時間も履いてると、それがすごく気になるんです。長いとどうしても、細かなところが大きくなってくる。

※3 シャンク…靴底内部に入れられる芯材。ソールのネジレを抑え、安定性や反発、突き上げの軽減に寄与する。

 

プロテクトするより、あえて水を迎え入れて水はけを良くする(小林)

ーーーーーアッパーでこだわったところは?

栗)アッパーはとにかく水はけがいい方がいいって小林さんが言っていたので。耐久性があって、水はけがいい素材を探してもらいました。

小)この生地自体が保水しないんです。トレイルだと沢に入ったり、渡渉があったりするじゃないですか。そういう時、普通のシューズってだいたい水を含んじゃうんですけど、これは保水しないので足の中に水が溜まらない。靴下はどうしても濡れちゃいますけど、ある程度水を出してくれるので、水ぶくれができづらいんです。プロテクトするというよりは、あえて迎え入れて水はけを良くする。ただ、朝露で濡れた草むらなんかだと一発で濡れますけどね(笑)。

栗)最近思うけど、ハイキングだと防水がいいけど、トレランだと水はけの方が大事な気がしますね。走っていると結局、上からも水が入ってきちゃう。

小)防水にしちゃうと、指がブヨンブヨンになりますからね。本当に。

 

TDSは累積1万mのレース。全く不満もないし、不安な部分もなかった(小林)

ーーーーーテストではどれくらい走り込んだんですか?

小)2足潰して、100kmも含めて100マイルで5回以上は走っています。TDS※4、トランスランタオ※5……レースだけでも500km以上は履いてると思います。そのフィードバックを毎回伝えて、改良してもらって。

栗)シューズのサンプルは3回ですね。サンダルの時にソールがある程度固まっていたから。それでもプロトからローンチまでは2年くらいかかっています。

ーーーーー納得のいくものができたと?

小)自分的には、この前のフランスのTDS、155kmで累積1万mのレースでも走ったんですけど、全く不満もないし、不安な部分もなかったです。ただ、土砂降りでめちゃくちゃ滑ったんですよ。終わった後に見たらソールが全然なくて(笑)。何百キロも履いたシューズだったので、事前にちゃんと(ソールを)確認してなかったんです。履きすぎですね(笑)。

※4 TDS…フランス・シャモニーで開催されるUTMBウィークの一つで、イタリアのクールマイヨールをスタートしシャモニーを目指すロングトレイルレース。標高差が大きく技術的なコースで知られる。

※5 トランスランタオ…香港・ランタオ島を舞台に開催されるトレイルランニングレース。石段が続くコースが特徴。

 

「街履きから100マイルまで」。ウエアと同じように、シューズもそうしたかった(小林)

ーーーーーワントーンのミニマルなデザインも印象的です。

栗)小林さんの要望が、スケシューみたいな見た目で、街で普通に履けるような、レーシーじゃないトレランシューズ。それにめちゃめちゃ賛同して、とにかくどシンプルで装飾なし、必要最小限のパーツだけ。それを鉛筆で絵に描いてデザイナーに渡して、小林さんに見てもらって。

小)うち(Answer4)のウエアがシンプルなんですよ。なのにシューズだけゴチャゴチャするのが嫌で。トレランシューズって配色もデザインも、街で履きづらいじゃないですか。僕は結構出張でも履くんですけど。うちのウエアは「街履きから100マイルまで」全部いける。その延長で、シューズもそういう風にしたかったんです。

ーーーーー自信を持ってローンチできたという感じですか?

小)個人的にはもう満足してます。

栗)ロングハイクにもすげーいい。できてから気づいたんだけど、ロードもすごく走りやすいし、歩きやすいんですよ。スパイクっぽいトレランシューズだとロードは走りにくかったりするけど、全然違和感がない。これは気に入ってます。

 

レース会場にこれを履いてる人がいっぱいいたら、ちょっといいなと思って(小林)

ーーーーー新しいカラーも控えているそうですね。

栗)来年、新色が出る予定です。これもスケートシューズっぽいというか、ストリートな雰囲気。

小)そもそもガムソールが良かったんです。実際はガムソールじゃないんですけど、ガムソール風の色。ここの色味はかなりこだわりました。

栗)一番こだわったところかもね。この茶色は2回くらい調整して。アディダスのスケートラインのサンバみたいな配色で。

小)トレランシューズでは絶対にしない配色ですよね(笑)。他のメーカーはカラフルで、いろいろデザインがついているものが多い。レース会場にこれを履いてる人がいっぱいいたら、ちょっといいなと思って。

 

このシューズを厚底に乗せたらどうなるのか。そこには好奇心があります(小林)

ーーーーー次のモデルの構想は?

小)市場はやっぱり厚底がメインで、長い距離になると厚底一強。なので、このシューズを厚底に乗せたらどうなるのかっていう好奇心はあります。これもそこまで薄いわけじゃなくてちょうど中間くらいですけど、普段厚底に慣れている人からするとかなり薄い部類に入ると思うので。

栗)そうなるとまたゼロからになっちゃうかな。開発にはやっぱり2、3年かかっちゃうので、何年後になるか分からないですけど(笑)。

2年の歳月と、数え切れないほどのフィールドテストを経て完成した、rig footwear初のトレランシューズ。「街履きから100マイルまで」を体現する一足を、ぜひその足で試してみてほしい。